Nucleic Acids Chemistry
KOHJI SEIO's group
Tokyo Institute of Technology
Department of Life Science and Technology
研究概要
 東京工業大学生命理工学院 清尾研究室では、核酸を分子レベルで自在に制御するための方法論の確立を目指して、有機化学、物理化学、生化学、計算化学など様々な手法を用いて研究しています。[研究室紹介はこちら]



核酸を分子レベルで自在に制御するための方法論の確立を目指して、有機化学、物理化学、生化学、計算化学など様々な手法を用いて研究しています





光による制御

 生命現象の制御の中核を担っているのが核酸-タンパク質相互作用です。核酸-タンパク質相互作用は、シグナル伝達に応じたDNAからの情報の読み出し、複製、外的要因により損傷をうけたDNAの修復など、さまざまな場面で中心的な役割を果たしています。これらの相互作用を、光により自在に制御する手法を開発できれば、組織の特定の部位の遺伝子を任意のタイミングで光により活性化させるなど、時空間を制御した研究を行うことが可能になります。

 私たちは、核酸-タンパク質相互作用の立体構造をもとに設計した分子を、有機化学の手法により合成することで、タンパク質との相互作用を光制御できる核酸の開発を行っています。例えば、2015年ノーベル化学賞で注目された核酸修復酵素(MutS)の機能の光制御や、光によってコントロール可能な転写(RNAポリメラーゼ)阻害剤の開発に成功しています。






蛍光核酸

 見えないものを見えるようにする。そのためのプラットフォームとして蛍光核酸の開発を行っています。見えないものを見えるようにするために、よく用いられるのは蛍光団の導入です。蛍光団を導入した分子は、光を照射することで蛍光を発し、どこにいるか見つけることができます。しかし通常の蛍光団は、周辺環境によらず蛍光を発するため、見たい相互作用をしていない状態でも蛍光が見えてしまい、本当に見たいものを見ているか判断ができません。

 私たちの研究室では、特定の相互作用があるときだけ光る蛍光核酸を開発しています。例えばベンゾフラン環を導入したBFdG。この人工ヌクレオチドを導入した核酸は、一本鎖や二本鎖構造の時は蛍光を発しません。しかし一本鎖結合タンパク質(SSB)が結合した時のみ蛍光を発します。このような蛍光核酸をもちいることで、いまそこで起こっている相互作用のみを見ることができるようになります。






核酸医薬

 治療法のない疾患を治療する。おそらく50%もの難病はスプライシング異常が関わっていると言われています。スプライシングの異常により、タンパク質の機能性部位が欠損した場合、従来の医薬品では治療が困難です。このような疾患に対し、核酸医薬は有効な方法となります。しかし、核酸医薬特有の課題が多くあり、汎用されているとは言い難いのが現状です。

 私たちの研究室では、核酸医薬品特有の課題を新たな化学修飾の開発により解決を目指しています。例えば2'-O-メチル 2-チオリボチミジン(s2Tm)。このヌクレオチドは好熱菌のtRNAの中に存在する構造です。高温でもtRNAの構造を保持することのできるs2Tmを合成し、導入することで、従来の治験薬(U20)よりも遥かに高い効能を示す核酸医薬の開発に成功しています。国立の研究所や企業と共同で、これまで治療法のなかった難病への創薬を試みています。






化学進化

 どのようにして生命が誕生したのか、という問いの前に、どのようにして生命を構成する生体分子が誕生したかという問いがあります。例えば核酸分子。ある種の核酸分子は酵素のように働くことがわかっていますが、そもそも核酸分子のような複雑な骨格をもつ化合物がどのように生成したのか、まだまだわからないことばかりです。地球の誕生から6億年間という冥王代にいったい何がおこったのか、その謎を解明するために、私たちは有機化学、核酸化学、なかでも特にリンの化学に着目してリボヌクレオチドやオリゴマーの生成の研究をしています。